香港碼頭日記

香港での生活を徒然なるままに、、、

『窄路微塵』: The Narrow Road

油麻地のcinemathequeにて香港映画『窄路微塵』を鑑賞。広東語は相変わらず片言の域を脱してないのだが、せっかく香港で暮らしているのだから、香港映画を見ない手はない。なんとか英語の字幕を追いながら鑑賞することとなった。

cinemathequeの一階部分にはブックカフェが併設されている。

上映開始が21:50だったので、カフェで本を読みながら時間をつぶす。

香港映画『窄路微塵』。

『窄路微塵』は、コロナ禍において零細清掃会社を経営する男性と、その会社でアルバイトをすることになったシングルマザーの女性(そしてその娘)を中心にストーリーが展開していく。香港で暮らしていると、いかにもお金持ちといった雰囲気を醸し出している人も少なからずいるのだが、この映画は香港社会における貧しい人達に眼を向けており、色々と再認識させられることがあった。

その典型例は、彼らの住環境。なんせ狭い。シングルマザーの親子が暮らしている部屋には外窓がなくて、子供が窓の絵を描いて壁に貼るシーンなんかは住宅事情の悪さを象徴している。男性の母親が暮らしている家も、家の出入り口のドアの横にリビングのソファーが置かれていて、正直日本の家屋よりもよっぽどウサギ小屋感がある。

若いシングルマザーは、調子のよいところがあるのだが、そういうときにちょっとした日本語を使うのも興味深かった。例えば、清掃会社のオーナーに対して(少し茶化した感じで)「よろしくお願いします」と日本語で挨拶したりする。こんな感じで日本人相手でもないのに、香港人のあいだで日本語が使われるというのは新鮮だった。

作品それ自体のストーリーは、想定の範囲内ではあったのだが、この時代の香港の世相を切りだしてくれているので十分楽しむことが出来た。

週末散歩

天気のよい日曜日、せっかくなので買い物がてら近所を散歩してみた。いつもであれば間違いなく釣行している天気なのだが、実は先週の土曜日からどうも体調が優れず、水曜、木曜には熱まで出てしまって、それ以来ほぼ自宅療養の生活を余儀なくされていたのだ。昔だったら一日寝れば、たいてい次の日にはなんとかなったのだが、数日休んでこの体調というのも困ったものだ…。

でもまあこのところ釣果のほうも冴えないし、よい気分転換と思えば散歩も悪くない。

香港らしい高層アパートとWelfare Association…福祉協会か。よくわからなかったが、趣がある建物だったので写真を撮ってみた。

堅尼地城で繁盛している點心専門店を発見。これは近いうちに実食してみなければなるまい。

トラム。バスはかなり活用しているのだが、そういえばトラムに乗ることはほとんどないな…。

堅尼地城にある映画館。おそらくアパートから一番近い映画館だろう。

階段アートを発見。左側のほうは船だろうか。右下は建物のようだ。

こういう週末も悪くない。小一時間近所を散歩しただけだが、それでもちょっとした発見があって、香港は暮らしやすい街だなとつくづく感じた。

搭枱(daap toi)

マスクの着用義務は依然として続いているものの、香港でもようやくコロナに関連した様々な規制が緩和されつつある。レストランに入店する際も、少し前までは体温チェックとワクチン接種証明の提示が欠かせなかったが、最近は完全にフリーパスで入れるようになった。

基本的に規制緩和はありがたいことなのだが、先日レストランで食事をした際に、「あー、これはコロナ前に戻ってしまって少し残念かも…」と感じる場面があった。それは香港の相席カルチャー。ちょっと前までは、相席になる場合でも必ずアクリル板のようなもので仕切ってくれるところが多かったのだが、規制緩和とともに仕切りはなくなり、二人席に見知らぬおじさんと仲良く向かい合って食事をすることとなったのだった。ちなみに、この相席、広東語だと搭枱(daap toi)というらしい。香港人の知人に聞いたら、香港人でも苦手という人はいるらしく、搭枱だったらやめておく場合もあるのだとか。

多少の相席ならば、まあ許容できるのだが、香港の場合は(店にもよるだろうが)結構容赦ない。香港に来たばかりの頃、日本食の店にひとりで入店したら、普通に若いカップルと相席になり、なんとなく申し訳ない気持ちで、そそくさと食事を済ませた記憶がある(ちなみにカップルは目の前におじさんが座っていることを殆ど意に介さない様子であり、文化の違いを感じたものだ)。

熱々の魚香茄子。実はこの先では見知らぬおじさんがひとり鍋をつついているという状況。

まあ実際のところ、むしろ言葉の壁もあるせいかそれほどは気にならないし、ひとつメリットをあげるとすれば、相席になったひとの注文した料理が、新たなメニュー開拓へのヒントになる可能性もあるということかな。

リベンジなるか!?

日曜は朝に屯門の三聖邨海鮮市場から出航して、クイーンフィッシュとGTを狙うという釣行予定だったのだが、前日の夕方頃から右目が赤く腫れだして(一種のアレルギー反応だと思う)、帰宅すると鼻水と頭痛に悩まされるという最悪の体調だった。そのせいでなかなか寝付けず、とりあえず朝起床したときには「待ち合わせ場所まで行って、体調が回復していなかったら代金だけ払って帰宅するのもやむを得ないな…」という状況。体調がすぐれないときに丸一日船釣りをするのは、他のメンバーにも迷惑をかけることになりかねないし、翌日の仕事に差し支えるようなことがあってはよろしくない。

そう思いながら、出かけに頭痛薬だけ飲んで、小一時間バスに乗って待ち合わせ場所の三聖邨海鮮市場へ。香港は日本に比べると交通費は安いので、ついタクシーを利用しがちなのだが、休日の早朝は渋滞に見舞われることも少ないのでバスがなかなか便利だ。結局予定時間よりかなり早く待ち合わせ場所に到着したので、三聖邨海鮮市場の周辺を散歩してみた。

近くには釣具屋がいくつもあって、周辺の茶餐廳も釣り人たちで賑わっていた。

なぜか石でできた卓球台もあった。

船着き場近くの路上でも、魚が売られていた。どんな魚が売られているか(つまりどんな魚が近海で釣れているか)、非常に興味深い。

周辺を散歩しているうちに、頭痛がおさまったせいもあるのか、なんとなく船釣りに行けそうな気分になってきた。頭痛薬を服用したので酔い止めは飲めないが、今日は外海に出ないだろうから酔い止めなしでも大丈夫だろう。

そんなわけで、釣り仲間に「顔色悪いですが、大丈夫ですか?」と心配されつつも、先月のリベンジを果たすべく、船に乗り込んだ。

まずは深井でクイーンフィッシュ狙い。船長が魚探を見ながら「many many fish bottom」などと指示を出してくれるのだが、みんな一向にあたりなし…。

続いて、前回と同様にストラクチャー周りに移動してGT狙いへ。

ストラクチャー周りでのGT釣り。明らかに水質はよくない(油臭いにおいもする)のだが、意外とこういう場所に集まっているのは不思議だ。

ここでは数名が小ぶりのGTを数匹釣り上げたが、前回ほどのヒットはなし。天気がよくなってきて暖かくなるにつれ、前日の睡眠不足のつけがまわってきて睡魔に襲われてしまった。

船長は他の船とも連絡を取りつつ、釣れそうなポイントを探してくれている。続いてはDiscovery Bayへ移動することになった。

Discovery Bayの岸際もポイントのようだ。ここでは一人の釣り竿に馬友がヒットしたものの、最終的にはバレてしまった…。でもこんな場所に馬友がいるのは新たな発見だった。

ディズニーランドの南側、ストラクチャーの下部分もGT狙いのポイント。碼頭から釣り糸を垂れている人達も結構いた。

最後にまた深井に戻ってクイーンフィッシュ、レディーフィッシュ狙い。でもこの日は総じてみなさん苦戦していて、ここまでボウズというメンバーも(自分を含めて)数名。

最後になんとかボウズ逃れのカサゴをゲット。

本日のみんなの釣果(カサゴ等のリリースした魚は除外)。うーん、しぶい結果となった一日だった。

結局、クイーンフィッシュ、レディフィッシュはゼロ、GTは小さいサイズのものが6匹と、この日はなかなか厳しい結果に終わった。残念ながら、前回のリベンジとはならず。船釣りとはいえ、簡単ではないということを痛感させられる日々が続く…。

霧の香港

異常に湿度が高い日が続いている香港。日曜日は、昨日以上に霧が濃かった。

昨日は十分釣りを楽しんだし(釣れなかったが…)、こういう天気のときは自宅周辺でのんびりするに限る。行きつけのパン屋に一週間分の朝食用のパンを買いに行ったり、スーパーに行ったりした後、ひとり飲茶をするときの定番、新興發點心でランチ。

ひとり飲茶のときの最近のレギュラーメンバーがこちら。

そして今回初めて注文したのがこちら。汁焼醸茄子(21香港ドル)。茄子の切り口のところにさつま揚げっぽいトッピングがされていて、なかなかのボリューム。大人数向けの一皿かな。

今日はついつい頼み過ぎてしまった。でも新しい一皿が試せたから良しとする。

釣行のときにはコンビニパンやおにぎり等が多いので、週末を街でのんびり過ごすときくらいは少し贅沢するのも良いだろう。通いなれた店のなかでは、抜群に店員の愛想がないのだが、それもまた香港らしさかも。

少し食べ過ぎたので、夕方になってから軽く海沿いの遊歩道をランニング。

遊歩道からみた対岸の九龍島。少し青空も見えるが、ICCビルはだいぶ隠れている。

次の週末は土日とも釣り仲間とほぼ終日釣りの予定だ。よい天気に恵まれますように!

深涌灣~茘枝荘

このところ香港は湿度が高く、生ぬるい感じの天候が続いている。土曜日はすっきりとした晴天ではなかったものの、雨は降りそうになかったので釣行へ。今年に入って、釣果があがらない日が続いていて、なんとなく釣りへのモチベーションも下降気味。でも、そんなときは新規開拓に限る、ということで、すでに時間は11時になろうとしていたが、思い切って西貢の西側(西貢西郊野公園)に行ってみることにした。

西貢の地図。これまでは右半分を攻めていたが、今回は左側(西側)へアプローチ。

香港島に住んでいると西貢は香港内ではアクセスが簡単ではない場所のひとつなのだけれど、調べてみると西貢西郊野公園に位置する深涌灣渡輪碼頭まではMTRの最寄り駅から1時間半ほどで行くことができる(あくまでもフェリーの時間が合えばだが…)。11時半にMTR香港大學駅で地下鉄に乗り、東鐡線の大學駅で下車。そこから、馬料水渡輪碼頭まで10分強歩いてフェリーに乗る。

馬料水のフェリー乗り場。ハイキングやキャンプに行く人たちが並んでいた。

フェリーの時刻表。なんと塔門まで行くとは。朝一のフェリーで塔門まで行って、最後(と言っても一日三便しかないが)のフェリーで戻ってくるというのは面白いかもしれない。

30分ほどで深涌灣渡輪碼頭に到着。途中、烏溪沙沙灘などを右手に見ながら進んで行ったのだが、ところどころで釣り人を見かけることがあって参考になった。

フェリーはこんな感じ。便数が少ないのもあってか、乗客は結構乗っていた。

深涌灣碼頭。波もほとんどたっておらず、非常に釣りがしやすい環境ではある。

スペースも広く、釣り人多数。みんな碼頭の下に釣り糸を垂らしていた。

足元を見ると、20cmほどの魚の群れが至る所に。でも全然食い気はなく、見える魚は釣れないという典型的なパターン。

イカの墨跡が散見されたので、どうやらイカ釣りのポイントではあるようだ。

深涌灣渡輪碼頭では、餌釣り(アオイソメ)を試してみたが、まったくといってよいほどあたりなし。周りの釣り人も釣れている気配はなかったので、次のポイントである茘枝荘にある大白角渡輪碼頭へ向かうことにした。

大白角碼頭。こちらも釣り人が数人いた。深涌灣と同様、水面は穏やかで釣りがしやすそうな場所だ。

餌釣りを試していたら、ネンブツダイが釣れた。時おり、魚のあたりはある。

碼頭から釣り糸を垂らしているおじさん達を見ていると、フグとかカサゴとかがときどき釣れていた。エギングをしている人もいて、墨跡もあったので一応イカも狙えるんだろう。

大白角のよいところは、碼頭の両サイドに釣りが出来るスペースが広がっていることだ。次回はもっと早めに来て、むしろ碼頭の周辺部を探ってみるべきだな。

碼頭の左側。頑張れば写真奥に先端が突き出している白角仔まで海沿いを歩けそうな感じだ。これは時間があるときにランガンする価値ありそう。

このあたりは岩石の模様もなかなか興味深い。

この岩も独特だ。色々知りたいことは多いのだが、釣りを含めてなかなか身につかない。

根がかりが若干心配だったが、岩場から投げてみたところ早速ネズミゴチがヒットした。

結局、あまり腰を据えて釣りすることもなかったせいもあり、この日の釣果はネンブツダイ1匹とネズミゴチ1匹のみ。でも、少し遠いけれど深涌灣~茘枝荘のエリアは天気がいい日に釣りをするには良さそうな場所がいくつもあることがわかった。今度は早朝から気合入れてくることにしよう。

帰りは、もと来たルートを引き返さずに白沙澳に抜けてバスを拾うことにした。白沙澳から海下路というミニバスが通っている通りにぶつかるので、その通り沿いのバス停で待っていればよいだろうと思っていた。ところが、この道路は7番のミニバスしか通っていないらしく、海下路を30分近く歩き続けてもバス停もないし、バスすら通らない…。結局、高塘まで南下して、北潭路にぶつかってようやくイメージしていたバス通りは海下路ではなく北潭路だったことに気がついた…。いや、季節が真夏とかではなくて良かった。思い込みでの行動は注意しないと…。なんとかバス停に辿りつき、鑽石山行きのバスに乗ることが出来て一安心。どうやら雨も降ってきたようで、なんとか濡れる前にバスに乗れたのは不幸中の幸いだった。

今回、塔門や西貢西郊野は色々と釣り場を開拓する楽しみがありそうだということがわかってなかなか充実した一日(半日)だった。過酷な夏が来る前にまた足を運ぶことにしよう。

映画館に足を運ぶ:『My Small Land』

平日の夜、油麻地のcinemathequeに足を運んで映画『My Small Land』を観た。アマプラなどのネット配信で手軽に映画が楽しめるこのご時世、映画館に行くという発想があまりなかったのだが、やはり映画を観るのであれば映画館がいちばんよい、ということを再認識することになった。もちろん、音響の良さとか大きなスクリーンの迫力とかも映画館の優れた点なのだが、なんといっても「映画に集中するしかない」という環境に身を置くことになるのが非常に大きいことに気が付いた。

broadway cinemathequeの建物。建物の前は広場になっていて、この周辺は少しおしゃれな雰囲気。cinematheque建物内にあるカフェもいい感じだ。

スマホで、ネットで、いつどこででも誰かと繋がったり、必要な情報が入手できる夢のような時代になったわけだけれど、その結果として、今、この場所でしか出来ないことに集中することが少なくなってきたような気がする。そんな貴重な、「今、この場所でしか出来ないことに集中」の機会を提供してくれるのが映画館なんだなと実感した次第だ。

この日は、日本の映画『My Small Land』を鑑賞した。埼玉県に住むクルド人難民の家族の話を、日本の高校に通う長女の視点を中心に描いた作品。クルド人は、トルコ、シリア、イラク、イランに居住しているが、少数民族という位置づけから中央政府から迫害を受けてきた歴史を持つようだ。そして、トルコから日本に逃げてきたクルド人難民認定されたのは昨年の夏が初めてだそうだ。正直なところ、こうした問題があることを認識していなかったので、安易にこの映画の家族のイメージだけをもって難民認定されないのはおかしいとは現段階で断言できないのだが、この問題が自分の意識のなかに刻み込まれたのは間違いない。少なくとも、日本の文化を尊重し、日本で真っ当な職業に就いて生活していこうとしている人達に対して門戸を閉ざすようなことはしたくないものだ。

『My Small Land』。

自らがその国家において少数民族であるという立場に置かれているとはどんな心境なのだろうか。香港に暮らしていると、たしかに日本人である自分はマイノリティーなのだが、少なくとも自らの帰属する国(日本)は存在するわけで、日本にいるクルド人が抱いている感覚を共有することは難しい。難しいのだけれど、無知のヴェールをもって考えてみたいと思う。これだけインフラが整っていて、にも関わらずこれから超高齢社会を迎えて人口が減少していく日本にとって、おそらく他国からの移民を受け入れていくことになるのだろうから。