香港碼頭日記

香港での生活を徒然なるままに、、、

映画館に足を運ぶ:『My Small Land』

平日の夜、油麻地のcinemathequeに足を運んで映画『My Small Land』を観た。アマプラなどのネット配信で手軽に映画が楽しめるこのご時世、映画館に行くという発想があまりなかったのだが、やはり映画を観るのであれば映画館がいちばんよい、ということを再認識することになった。もちろん、音響の良さとか大きなスクリーンの迫力とかも映画館の優れた点なのだが、なんといっても「映画に集中するしかない」という環境に身を置くことになるのが非常に大きいことに気が付いた。

broadway cinemathequeの建物。建物の前は広場になっていて、この周辺は少しおしゃれな雰囲気。cinematheque建物内にあるカフェもいい感じだ。

スマホで、ネットで、いつどこででも誰かと繋がったり、必要な情報が入手できる夢のような時代になったわけだけれど、その結果として、今、この場所でしか出来ないことに集中することが少なくなってきたような気がする。そんな貴重な、「今、この場所でしか出来ないことに集中」の機会を提供してくれるのが映画館なんだなと実感した次第だ。

この日は、日本の映画『My Small Land』を鑑賞した。埼玉県に住むクルド人難民の家族の話を、日本の高校に通う長女の視点を中心に描いた作品。クルド人は、トルコ、シリア、イラク、イランに居住しているが、少数民族という位置づけから中央政府から迫害を受けてきた歴史を持つようだ。そして、トルコから日本に逃げてきたクルド人難民認定されたのは昨年の夏が初めてだそうだ。正直なところ、こうした問題があることを認識していなかったので、安易にこの映画の家族のイメージだけをもって難民認定されないのはおかしいとは現段階で断言できないのだが、この問題が自分の意識のなかに刻み込まれたのは間違いない。少なくとも、日本の文化を尊重し、日本で真っ当な職業に就いて生活していこうとしている人達に対して門戸を閉ざすようなことはしたくないものだ。

『My Small Land』。

自らがその国家において少数民族であるという立場に置かれているとはどんな心境なのだろうか。香港に暮らしていると、たしかに日本人である自分はマイノリティーなのだが、少なくとも自らの帰属する国(日本)は存在するわけで、日本にいるクルド人が抱いている感覚を共有することは難しい。難しいのだけれど、無知のヴェールをもって考えてみたいと思う。これだけインフラが整っていて、にも関わらずこれから超高齢社会を迎えて人口が減少していく日本にとって、おそらく他国からの移民を受け入れていくことになるのだろうから。