油麻地のcinemathequeにて香港映画『窄路微塵』を鑑賞。広東語は相変わらず片言の域を脱してないのだが、せっかく香港で暮らしているのだから、香港映画を見ない手はない。なんとか英語の字幕を追いながら鑑賞することとなった。
『窄路微塵』は、コロナ禍において零細清掃会社を経営する男性と、その会社でアルバイトをすることになったシングルマザーの女性(そしてその娘)を中心にストーリーが展開していく。香港で暮らしていると、いかにもお金持ちといった雰囲気を醸し出している人も少なからずいるのだが、この映画は香港社会における貧しい人達に眼を向けており、色々と再認識させられることがあった。
その典型例は、彼らの住環境。なんせ狭い。シングルマザーの親子が暮らしている部屋には外窓がなくて、子供が窓の絵を描いて壁に貼るシーンなんかは住宅事情の悪さを象徴している。男性の母親が暮らしている家も、家の出入り口のドアの横にリビングのソファーが置かれていて、正直日本の家屋よりもよっぽどウサギ小屋感がある。
若いシングルマザーは、調子のよいところがあるのだが、そういうときにちょっとした日本語を使うのも興味深かった。例えば、清掃会社のオーナーに対して(少し茶化した感じで)「よろしくお願いします」と日本語で挨拶したりする。こんな感じで日本人相手でもないのに、香港人のあいだで日本語が使われるというのは新鮮だった。
作品それ自体のストーリーは、想定の範囲内ではあったのだが、この時代の香港の世相を切りだしてくれているので十分楽しむことが出来た。